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新築マンションの販売は依然好調だが、なかにはスラム化する要因を抱えた物件もある。“ババ”をつかまないための7カ条とは?
スラム化しないマンションを選ぶ7つのポイント
マンションがスラム化するかしないかの論争が最初に表面化したのは1960年代後半と、記憶している。
当時、TVのワイドショーで司会者が「将来マンションはスラム化する」と発言。これに対し、秀和の小林茂社長が「管理がしっかりしたマンションは絶対にスラム化しない」と反論し、司会者に“スラム化”発言を撤回させる出来事があった。(株オンライン)
確かに管理の優劣はマンションの居住性や資産価値に大きな影響を与えるが、管理以外にも重要な諸条件があり、これはマンション購入時の大事なチェックポイントになる。以下、主な条件を解説してみる。
(1)居住環境を重視する
高級住宅地内に立地したマンションなら居住環境に不安がないのは常識だが、当然、価格は高水準となり、中堅サラリーマンには手が届かない物件が多い。
最近は大工場の移転跡地などに建設される大規模マンションが増えて、根強い人気を集めている。周辺環境はマイナーでも敷地の広さを生かして、公園、子どもの遊び場、緑地などを整備した物件がそれで、「環境創造型マンション」と呼ばれている。
また、公団などが開発したニュータウン内に立地したマンションも、将来の住環境には不安がない。44~45ページの性能・品質チェックシートで「敷地の利用計画」が高得点をマークした物件には、これらに該当するケースが多い。チェック項目の「周辺住宅街のレベル」の得点は低くても「敷地の利用計画」が高得点をマークしている大規模マンションなら安心感がある。
(2)駅前立地の市街地マンションは要注意
“専用住宅以外に使用してはならない”と管理規約で縛りを付けた例はきわめて少ないために、事務所や店舗などに転用されて“雑居化”するのは市街地に建つマンションの宿命だが、とくに駅前立地の物件はこの不安が強い。風俗関係の店舗などに転用されてトラブルを起こす例が目につく。雑居化すると、集合住宅の生活ルール無視や防犯面での不安、管理に対する住民の足並みが乱れるなど、生活環境が荒れてくる。
(3)高強度コンクリートを使用しているか
山陽新幹線のトンネル崩落事故でコンクリートの劣化が問題になり、マンションでも同様の被害が発生する可能性が大だと指摘されている。これまでベランダや階段室、あるいは居室内の天井が落下する事故が発生しているのも事実だが、発生件数などのデータは不明だ。
劣化はコンクリートの宿命だが、最近は高強度コンクリートを使用するマンションが目につくようになってきた。通常のコンクリートに比べて劣化のテンポが遅いという特徴があるが、どれだけ遅いかに関するデータは見当たらない。劣化を遅らせるという点では、通常のコンクリートを使ったマンションよりはまだ安心感はあるといえよう。
また、コンクリートに海砂を使ったために鉄筋が腐蝕するトラブルもある。海砂を使うのは地域差もあるが、十分に水洗いして完全に塩分を除去すればよいが、ここで手抜きされることもある。
(4)天井の高さに加え二重床二重天井かどうか
モデルルームで天井高だけを気にするユーザーが多いが、あまり感心しない。天井の高さを売り物にするマンションの中には、直床といってコンクリートスラブの上に床仕上げ材(フローリングやカーペット)を直貼りにする例があり、天井も同様だ。遮音性が劣る場合がある。
床はコンクリートスラブ厚20センチ以上で二重床(置き床や浮き床)にしたほうが遮音性能も高まるし、二重天井で天井裏に電気配線したほうがメンテナンスも容易である。チェックシートで「建物躯体の施行レベル」の評価が4・5以上の物件は、二重床などになっている例が多い。住宅金融公庫の優良中古マンションAレベルの認定要件のひとつに“床スラブ厚20センチ以上、戸境壁の厚さ15センチ以上”という規定もある。
(5)給排水管のサビ防止やメンテナンスは……
赤水が出たり、排水管が腐蝕して排水不良や水漏れを起こすトラブルも少なくない。給水管は鉄管(鋼管)を使用するケースが多いが、これはサビやすい欠点がある。塩化ビニールで鋼管をくるんでもサビの完全防止はできない。最近はサビないステンレス管を使用するケースも出ているので、この点もチェックしたい。
また、給水・給湯管はサヤ管ヘッダー方式といって、取り替えやメンテナンスが容易な配管システムも普及している。
(6)排水シャフトの配管方法も重要
排水縦管(シャフト)のメンテナンスもマンションを長持ちさせるうえで、重要なポイントになる。間取り図にPSと表示されているのが排水シャフトの位置と系列を示している。3LDKを例にとると、排水シャフトは台所、洗面・浴室、トイレと3系列あるのが望ましいが、2系列も少なくない。この場合、シャフトに排水を流す横引き管の距離が長くなると、十分な勾配がとれないので排水不良の原因になる。
また、排水シャフトは専有部分(住居内)に設置され、メンテナンスや補修で住生活が影響を受けるが、最近は排水シャフトをベランダや共用部の外廊下に出して、メンテナンスなどが容易にできるよう配慮したマンションも出てきた。この方式なら居住性もよくなるし、長持ちする。
(7)管理会社の信用度をチェック
時々管理会社の倒産などによる不祥事が発生する。管理費の会計が不明朗で使い込みされることもあるし、倒産には到らないものの、管理がズサンな業者もあり、区分所有者の不満を買うケースも少なくない。
管理会社の信用度の判断はむずかしいが、総合管理をこなせる技術系社員をどれだけ抱えているか、各マンションに派遣する管理人に対する教育研修体制が十分かなどをチェックしなければならない。これは管理会社の会社案内や経歴書などで、ある程度の判断はできる。
現実には技術系社員が多くても、教育研修システムが充実していても、居住者とトラブルを起こす例はあるが、それでもシステムなどが不十分な業者よりはマシである。
また、管理会社だけに責任を負わせてよいものではなく、区分所有者の管理に対する理解と協力も、良好な管理には必要で、スラム化を防止する大事なポイントになっている。たとえば、長期修繕計画がどんなによくできていても、それを計画どおり実施するかどうかは、区分所有者の意思次第になってくる。
つくり手であるデベロッパーと、区分所有者、そして管理会社の3者が協力し合うことが、スラム化防止の決め手である。